IoT 人材育成の取り組み「Web×IoT メイカーズチャレンジ」

学生や若手エンジニア向けに、Raspberry Pi などの小型ボードコンピュータを使って JavaScript によるハードウェア制御を実践的に学べるイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ」が全国で開催されているのをご存じでしょうか。

今回は、WebDINO Japan も運営や企画などに協力させていただいているこのイベントについてご紹介したいと思います。

この取り組みは、総務省の事業 (IoT 機器等の電波システムの適正利用のための ICT 人材育成事業) の一貫として 2017 年からスタートしたもので、初年度は、仙台・前橋・横須賀・鳥取・沖縄の 5 地域で開催し、2018 年 10 月から 2019 年 3 月までの今年度は、開催地域を 9 地域 (札幌・仙台・茨城・前橋・東京・横須賀・鳥取・香川・沖縄)に増やし、各地でハンズオン形式の講習会やハッカソンが行われています。

WebDINO Japan では、イベントの基本方針を検討する実行委員会に参画させていただいているほか、鳥取と前橋、東京会場の運営などを担当しています。

各地のイベントは、「ハンズオン講習会」とその数週間後に講習の成果発表の場として行われる「ハッカソン」の 2 部構成で実施されます。

イベント名の「Web×IoT メイカーズチャレンジ」からもわかるように、この取り組みでは、ウェブ技術を中心に据えた IoT システム開発や、ここ数年、世界でも注目を集めているデジタルを駆使したパーソナルなものづくりの潮流「メイカームーブメント」の要素を取り入れたIoT 開発のスキルアップを目的としています。

ウェブブラウザ技術で IoT に挑戦!

JavaScript や HTML といったウェブブラウザ技術で IoT システム開発を学ぶ理由としては、標準で中立的な ICT 技術であること、ソフトウェア技術者の基本知識として広く知られている技術であること、そして特定のベンダー、OS、デバイスに依存せず広く使われるマルチプラットフォーム対応技術であることが挙げられます。

また、ウェブ制作やアプリ開発の経験を持つ皆さんにも電子部品やハードウェアを扱う IoT 開発に挑戦してみていただきたいという想いもあります。

CHIRIMEN for Raspberry Pi 3

私たち WebDINO Japan が担当する地域では、ハンズオン講習会の教材・ハッカソでの開発環境として、CHIRIMEN Open Hardware コミュニティがオープンソースプロジェクトとして提供する「CHIRIMEN for Raspberry 3」を使っています。

CHIRIMEN for Raspberry Pi 3 は、名刺サイズの小型コンピュータ “Raspberry Pi"上に構築された IoT プログラミング環境で、Web GPIO API や Web I2C API といった JavaScript でハードを制御する API を活用したプログラミングにより、ウェブアプリ上で Raspi に接続した電子パーツを直接制御できます。

Raspberry Pi 3 のブラウザを使うので、PC 不要で実習を行うことができ、チュートリアルドキュメント やサンプルコードも充実しているため、初学者でも気軽に IoT 開発にチャレンジできます。また、講師用のドキュメントやよくある質問や Tips、トラブルシューティング集 なども用意されています。

ハンズオン講習会

ハンズオン講習会では、IoT の基礎知識に加えて、WiFi や LTE 等、IoT には欠かせない通信技術やその根源となる電波の特性についての講義を行った後、各参加者に CHIRIMEN for Raspberry Pi 3 の環境が貸し出され、実習を行います。

鳥取や前橋の会場では、プログラミング初学者の方も多くいましたが、皆さん電子工作の Hello World とも言われる LED を点滅させるプログラム (通称「L チカ」) を早速成功させた後、自分のペースでチュートリアルに沿って様々なセンサー制御を楽しんでいました。

失敗から学ぶハッカソン

講習会が終わると、いよいよハッカソンに向けての準備がスタートします。Web×IoT メイカーズチャレンジのハッカソンは、アプリやソフトウェア開発のハッカソンとは異なり、モノづくりを伴うため、作品制作には材料費が発生します。

ハンズオン講習会で学んだ技術を使って自分たちのアイデアをカタチにするプロトタイピングを実践する機会でもあるため、学生や若手エンジニアの皆さんでも心おきなく作品制作に取り組めるよう、このハッカソンでは、チームの作品制作にかかる材料費を一定の上限額の範囲内で主催者が負担します。

ハンズオン講習会からハッカソンまでは通常、数週間の準備期間が設けられますが、その間、ハッカソン参加の各チームは、ハードウェアの制作を始めたり、部材やセンサー、モーターなどの材料調達を行ったりと、ハッカソンに向けての準備を行います。(事前にコードを書き始めたり、ハード制作の準備も OK なのが普通のハッカソンとは少し違うところです)。

講習会付きのハッカソンは数多く開催されていますが、ここでは、賞金や賞品目的で腕自慢が多く集まる一般的なハッカソンとは違って、「学びの機会」としての意味合いが強いのも特徴です。結果よりもプロセスを重視し、ハッカソンで実際に作品を作ってみることで、うまく行かないことや、失敗したこと、わからないことを講師やチューターに相談しながら一緒に乗り越え、作品を完成させることで、エンジニアとしての自信や仲間との共創など多くの学びが得られることを目指しています。そのため、ハッカソンでは講師やチューターが、ソフトウェア開発のサポートのみならずハードウェアの工作まで、全力で参加者をサポートし、作品制作を一緒になって行っている姿が多く見られます。

オープンソースコミュニティイベントのエッセンス

このイベントは参加者の皆さんの学びの場ではありますが、講師やスタッフをはじめとした運営メンバーもフラットな立場で参加者と一緒にイベントを楽しむ!というオープンソースコミュニティのイベントのような雰囲気づくりを心がけています。

参加した各地の皆さんからは雰囲気が良く質問しやすかった!楽しかった!これから自分でも勉強したい!という嬉しい声も多くいただいています。ぜひ IoT の世界に一歩踏み出すきっかけにしていただきたいイベントです。

1 月末で申し込み締切ですが、今年度は 2 月 9 日 〜 10 日 (ハンズオン講習会) ・ 3 月 2 日 〜 3 日 (ハッカソン) の日程で 東京でも開催を予定しています。興味のある方はぜひご参加ください!

参考情報: